平成18年度大会 報告 [2007/04/01 更新]
平成18年度の大会は、11月26日、日本女子大学目白キャンパス新泉山館大会議室で行われた。
研究発表
須藤 義人
氏は「琉球列島における棒踊り系芸能の研究」と題して、
沖縄本島のフェーヌシマ(南の島踊)の十二芸態の事例をAは先導・棒踊・手踊のモデル、Bは棒踊・手踊のモデル、Cは棒踊・劇のモデル、Dは棒踊のモデル、Eは特殊モデルに分類し、その組み合わせ、場の構成をもとに図表化を試みたことが発表された。
永松 敦
氏は「宮崎市内の神楽 ― 箕と杵の宗教性 ―」と題して、
市内三十余の神楽・春神楽のうち、生目、大塚、古城の演目では田の神から杵舞となる。これは季節的に農耕の予祝と考えられる。一方、杵舞で箕を橋渡しにした杵の上に立つ動作、また杵をバトンのように回す動作など独特の要素を有している点から県内の椎葉神楽や祓川神楽(高原町)も資料に、県内南北の神楽の中間に属する神楽を考察し、県全体の神楽の宗教性を際立たせたうえで、箕と杵の宗教性に言及した。
基調講演
講師:植木 行宣 氏 テーマ:風流踊り研究の現状と課題
講演要旨
滋賀・京都の例から、イ.踊り手が楽器を奏しつつ踊る踊り、ロ.組歌形式の小歌を踊歌とするが腰鼓姿で打ち踊る中踊やその系統の踊り子が中心、ハ.組歌形式の小歌を踊歌とし、側踊が踊る歌の部分では太鼓・鼓などの踊り手や音頭からなる中踊が囃子方となり、節拍子では中踊が踊り手となるものでその踊りが主体、ニ.ロの省略形で、腰鼓姿や小太鼓を抱えたり下げたりする小人数の踊り手が笹を採る新発意の采配で打ち踊るもの、ホ.囃子方と踊り手の構成で、歌謡としての踊り歌の享受を主体とする踊をあげ、風流踊りは、イの歌をもたぬ拍子物とロ以下の歌を共有する風流踊りに分けられ、さらに腰鼓姿の踊り手による節拍子が主体となる 鞨鼓踊り、同じく節拍子が主体だが踊り手が太鼓など打楽器系の複数の楽器を打ち踊る太鼓踊り、踊り歌の享受が主で歌とともに緩やかに踊る小歌踊りの三つに分類できる。
シンポジウム
シンポジウムは、植木氏のテーマを受けるかたちでパネラーが意見を発表した。
青盛 透
氏は、「囃子物という芸能」が風流踊り成立以前の芸能様式と位置づけ、その根拠として囃子物は中世の祭礼に登場する語で、芸能史の分野であるいは民俗芸能で常用される様式名称であり、文献上では風流・囃子物と表記され、中世に広く分布した風流系芸能の一様式であるところから風流踊りへ発展する前段階の芸能である。
中村 茂子
氏は、「風流踊りと三頭シシ踊りの接点」として佐渡の小ジシ舞八例をあげて風流踊りの中踊りの可能性について追求し、あわせて三匹獅子舞という呼び方を三頭シシ踊りに改める。
山路 興造
氏は、「風流踊り系民俗芸能の芸態変遷」を、囃子物の登場から民俗芸能に残る代表的囃子物、側踊りの登場、京都における盂蘭盆会の町踊り、中踊りを取り巻く側踊り、江戸時代前期の盆踊り、関東の三匹獅子舞(踊り)の図絵を提示し、まず囃子物が生まれ、それを中踊りとして側踊りがつき、側踊り主体の盆踊りに変わっていく。
笠 理砂
氏は、「盂蘭盆会の風流踊りについて」初期洛中洛外図の町田本、東横本、上杉本に描かれた盂蘭盆会の踊りをスクリーンに投影し、比較を通して、芸態の変遷及び作者の構想に迫った。
以上
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